民家再生M'sホール

昭和初期の倉庫の再生

大阪の泉南は、タマネギとタオルの街で、街には、今でもそれらに関わる倉庫、工場の類が点在し、独特の景観を形成しています。 永く使用されないまま物置になって放置されていた昭和初期のタマネギ小屋が、ピアノ・バイオリン・バレーのレッスンの場、アトリエ・読書・集会の場など、家族の様々な趣味の場として生き返りました。

芸術的な梁と素材

この小屋を支えている、うねるような地松の梁の存在感は、この建物を存続させるための大きな鍵となりました。

辻子(つし)二階を撤去し、その芸術的とまで思える地松の梁を現しにし、構造的な補強をしていくと共に、 道路側の窓は塞ぎ、庭に面した壁には大きな開口を開け、デッキを介して、外の庭の緑につながる、居心地の良い空間へと再生しました。

ホールとバックスペースである、化粧室、湯沸室を隔てる壁は、天井との空間を開けて、象徴的に屏風のようにして建てることで、空間を区切ることなく、また、ステージのバック反響版としての役割も果たせます。
独立壁の素材は、その梁のもつ力感と対比して、釣り合うものである必要があり、タオル工場のレンガ造をどこか連想させるような、極端に色むらの多い素焼きのセッキ質タイルを、底を荒らした深目地にして貼り上げ、砂入り漆喰木鏝ずりの余白の壁、蜜ロウ仕上げの秋田杉の床と相まって、どこか懐かしい雰囲気のする空間となりました。

また、書棚は米松の梁と秋田杉の厚床板を組み合わせたものです。 

こうした、素材と形を吟味しながら建物を再生させるという行為を通して 「街の記憶の保存」に、ささやかではあるが寄与することができたのではないかと思っています。


改築前



改築後