安立の家

長屋を三世代同居のソーホー住宅に

住吉大社の近くには古い長屋がまだあちこちに点在していますが、この敷地も棟割長屋の一区画が残ったもので、間口4.6m奥行き16.8mの細長い敷地です。
隣は既に鉄骨造3階建の家、道向かいは木造2階建の家に建て変わっており、この家も、元からここに住まわれているお母さんと娘さん夫婦世帯が同居する形で、そこに仕事場のアトリエも付加したいとのことでした。
生活の時間帯の違う二世帯が、お互いの生活音を気にせずに暮せるように どのように、プランニングするかを色々と話し合い、1階に水周りと奥にお母さんの部屋を、2階に共通の居間台所と子供部屋、3階に娘夫婦のアトリエ・寝室・書庫を設定することになりました。2階床下には、防音シートとALC版も敷いています。

光庭をもつ空間に

隣家が接近しているこの敷地で快適に住もうとすれば、どうしても天空からの光をうまく取り入れなければなりません。光庭を家の中央につくり、その上に大きなガラスの屋根を設け、スノコのデッキやスノコのブリッジなどを介して 出来る限り多くの光が1階にまで届く空間構成にしました。
そして、そこに、室内でも育つ棕櫚竹を植えました。
また、道路から直に玄関扉とはせずに、門扉なる格子戸を設けたことで 建物に心理的な奥行きをもたらすことができました。また、この格子と玄関扉横の格子により、鍵を閉めたままで家の中に風を通す働きも担っています。

心豊かに住まう

自然の少ない大阪の下町で、癒される住空間を造るには、かなり意識して自然を導きいれなければならなりません。人は、知らず知らずのうちに、周りの自然によって癒されているところが大きいと思いますが、現代社会においては、その自然の要素がどんどん減少しています。
肌に心地よい風、程好い湿度を持った風、嗅覚を満足させる風、それらを通すために、無垢の木材を多用し、床下には炭を引き、土間にはソイルセラミックス、壁には、藁入り珪藻土の塗り壁にしました。
また、透明のガラス屋根を通して、雲の流れていく様子や、月の満ち欠けを楽しみ、光庭の緑は、心を潤してくれます。
「2階のデッキにおいた椅子に座って空を眺めていると時間の過ぎて行くのを忘れる」と言っていただきとても嬉しく思っています。